D. 日和見病原体

 

Pasteurella pneumotropica (肺パスツレラ)

 肺パスツレラは、グラム陰性短桿菌で、Jawetz型とHeyl型の2種類の生物型に分類されている。Jawetz型とHeyl型の生物学的性状には差があり、標準株の16S rRNAシークエンスをみても97%以上の相同性は認められない。さらに分離株間の性状も多様で特にJawetz型に属する菌株は多様である。
 血液寒天培地上で、前者は直径3~5mmの灰白色のコロニー、後者は淡黄色のコロニーを形成する。
 本菌はマウス、ラット、ハムスター、モルモットおよびウサギなどから分離される。特に、マウス・ラット実験動物施設から高率に検出される細菌のひとつである。病原性に関しては、1960年代の報告では、マウス・ラットの肺炎起因菌であるとされていたが、感染動物の剖検所見においても肺病変は認められないことから通常の動物に対しての病原性は極めて低いと考えられる。一方、免疫不全動物に関しては、実験感染により肺病変の形成やそれによる死亡個体が出現することから、これら動物からは排除すべき病原菌であるといえる。
 本菌は主に結膜や気管から分離されているが、伝播は糞便を介した接触感染にて起こると考えられる。
 診断法は、結膜および気管粘膜のフキトリ材料からの菌分離が最適である。またPCR法検査は生化学性状検査の代わりとして用いることができるが、分離菌をいきなりPCR法にて検査すると間違った同定結果を得ることがある。

 

Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌)

 緑膿菌は、グラム陰性、極在性単鞭毛を有し運動性がある無芽胞桿菌、多くの菌株は蛍光色素ならびに水溶性色素ピオシアニンを産生し、これが緑膿菌という種名の由来である。
 本菌は普通寒天培地、血液寒天培地などほとんどの非選択培地に発育するが、分離には本菌の選択培地であるNAC寒天培地を用いて行われる。NAC寒天培地に検体 (糞便、盲腸内容物等) を接種し、37℃、48時間培養すると、2種類の形態を示すコロニーが形成される。ひとつは大型で平滑、辺縁が扁平で中央が隆起したコロニー、他は小型でラフ型のコロニーを形成する。多くの菌株は青緑色、非蛍光性と黄緑色で蛍光を発する2種類の色素を産生し、特徴的な臭気 (線香臭) も産生する。
 本菌はマウス、ラットなど多くの実験動物から分離され、まれにマウスに中耳炎を起こし旋回症状呈させることがあるが、通常病原性はなく、免疫不全処置や特殊な実験処置によるストレスにより発病することがある日和見感染菌である。特に免疫不全動物が感染すると菌血症により死亡することがあるので、これら動物には排除対象病原菌とすべきである。
 伝播は、糞便を介した接触感染や、飲水を介して起こる。飲水を介する伝播防止には、塩素添加 (5~10ppm) が有効であるとされている。
 診断法は、盲腸内容物、糞便からの菌分離が最適である。

 

Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)

 黄色ブドウ球菌は、グラム陽性球菌で、寒天培地に発育した菌はぶどう房状の不規則な集塊を形成するが、病巣材料中では単在、双球状あるいは短連鎖状を示すことがある。運動性、鞭毛がなく、芽胞は形成しない。
 本菌は普通寒天培地、血液寒天培地などほとんどの非選択培地によく発育するが、分離には本菌の食塩耐性能、マンニット分解能等を利用したマンニット食塩寒天培地や卵黄反応も観察できるエッグヨーク食塩寒天培地が常用されている。本培地に糞便等の材料を接種し、37℃、24時間培養すると、直径2~3mmの黄色コロニーが発育し、その周囲にリング状の卵黄反応が観察される。
 本菌はマウス、ラットなど多くの実験動物から分離され、高い汚染率を示すが、通常病原性はなく、日和見病原菌に位置づけされる。多くは闘争などによる咬傷後の皮膚炎や、金網床による創傷後の趾踵膿瘍など、二次感染の原因菌である。しかし免疫不全動物においては、化膿性結膜炎や皮下膿瘍形成により実験に障害をおよぼすことがある。したがって緑膿菌と同様に、免疫不全動物においては排除対象病原菌とすべきである。
 伝播は、感染動物の糞便や保菌者を介した接触感染により起こる。飲水を介する伝播防止には、塩素添加 (5~10ppm) が有効であるとされている。
 診断法は、病変部 (膿汁) 、盲腸内容物、糞便からの菌分離が最適である。

左: <i>S. aureus</i> 自然感染ヌードマウスの外観所見: 顔面部の皮下膿瘍    右: <i>S. aureus</i> 自然感染ヌードマウスの心臓組織 (H&E染色像) : 化膿性心筋炎

左: S. aureus 自然感染ヌードマウスの外観所見: 顔面部の皮下膿瘍

右: S. aureus 自然感染ヌードマウスの心臓組織 (H&E染色像) : 化膿性心筋炎

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